Mudanin Kata (2004/David Darling & Wulu Bunun)

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ECMからのリリースで知られるチェロ奏者・David Darlingと、台湾の少数民族ブヌン族の邂逅。
ブヌン族の歌は、複雑で精緻な現代の音楽とも類似する8部和声で、音楽起源に関する研究においても国際的に注目されている。
それまでの「楽曲の起源は単音を基調としてより複雑なアレンジに発展した」という学説を覆すものらしい。
David Darlingにとっても、音楽の価値観を揺るがすほどの発見だったそうで、ここでのチェロは喜びに満ちている。
鳥のさえずりの間から聴こえる無垢な声。原始、人間の生活とはこのようなものだったのか。
環境音楽のイディオムを使いながらも、力強い作品。

I Hear A New World (1960/Joe Meek)

彼は楽器どころか、譜面さえ読めなかったという。
愛するBuddy Hollyの命日に妻を射殺し、自らの顳顬を撃ち抜く。そんな芸当はおよそ天才にしかできない。
ストローで泡をぶくぶく、櫛で灰皿をガリガリ、トイレの水をジャ〜、
あらゆる生活音(というよりも"音楽"以外の音=ノイズ)で練り上げた世界は、キッチュでエキゾチックで可愛い。
だが、この当時にLP化などされるわけもなく、4曲EPが60年に発売。お蔵入り曲をコンパイルして、91年にいまの形式になった。
アンビエントのキーワードである"浮遊感"は、宇宙の彼方から届いている。

Zero Time (1971/Tonto's Expanding Head Band)


 
サイケの古典的名盤として知られる1st。
MOOGに複数のモジュラーを接続して、世界で初めてポリフォニックを可能にした巨大なアナログシンセ"The Original New Timbral Orchestra"、
略して"TONTO"を開発した、Malcolm CecilとRobert Margouleffによるユニット。
彼らは70年代前半のStevieやIsley Brothers、さらにMinnie Ripertonの「Lovin' you」をプロデュースしている。
アナログシンセならではの人力な浮遊感は、アンビエントとしても聴ける。
Brian De Parlmaの『Phantom Of The Paradise』でもフィーチャーされたが、全編を通すとあの狂気は薄らいで眠くなる。