Music For Astro Age (1992/ヤン富田)
このデビュー作発表当時はすでに40歳だから、キャリアとして決して早くはない。いや遅いくらいだ。
この「遅れてきた音楽家」は、以降のリリースペースを見る限り、まるで音楽産業とは無縁に生きているように見える。
彼の自由さ、そして音の自在さは、贅沢そのものだが、この"贅沢さ"は現代の日本人には贅沢過ぎる。"2050年のAstro Age"用。
Rainbow Dome Musick (1979/Steve Hillage)
元Gongのギタリストによるソロ6作目。
ディレイをかけたエレクトリック・ギターの心地良さに浸ることができる、徹頭徹尾ビートレスのインストゥルメンタル・アルバム。
ドイツといい、フランスといい、「非アメリカ圏」として傍流に追いやられた「西洋」がこの長大な曲の中で頑として屹立している。
Corona: Tokyo Realization (2006/Jim O'Rourke)
Morton Feldmanが考案し、後に"偶然性の音楽"や"不確定性の音楽"を生み出すきっかけとなった「図形譜」。
1962年に武満徹が作曲した「ピアニストのためのコロナ」を、ジム・オルークが再構築し、ミックスダウンまで手掛けた作品。
2ヴァージョン収録されており、同じ図形譜ながら、全く異なる解釈で演奏される。
プリペアド・ピアノのノイズが、低いドローンの合間を劈く。不安、緊張、覚醒。
【図形譜】
五線譜では表現しきれない新しい音楽を創造する手段として、あるいは既成の概念を打ち壊す作業の一環として現代音楽作曲家が競って図形譜による作曲を試みた。
ジョン・ケージなどによる偶然性が関与する「不確定性の音楽」あるいは、伝統的な西洋音楽の価値観を覆す偶然性を音楽に用いる手段ともされた。
図形や、文字、絵画なども使用され、ときには旧来の音符や五線譜も使われる。線が複雑に交錯したり、ときには時の経過も左から右と限ったわけでなく、あるいは天地左右もなく自由自在に書かれる。
このため、演奏家の解釈により2度と同じものにはならない場合が多く、即興性が高くなる。また楽器の使用も指定されないものもある。